2008/2/14:バレンタインの泥団子
《バレンタインの泥団子》 その1
「バレンタインに女の子からチョコを贈って「告白」・・・なんて、10代で卒業さ。」
「バレンタインは、所詮イベント、「恋のお祭り」・・・期待なんかしちゃ駄目よ!」
と、去年までクールに言い切ってた先輩が、この春、晴れて結婚することになった。
それは、おめでたいのだが・・・、そのきっかけが、去年のバレンタインだったらしい。
そりゃないだろう!所詮イベント、期待するな・・・
と言ってたのに、先輩は嘘つきだ、と詰め寄ったら・・・
「義理rチョコ」を配っただけで、「告白」なんかしていない。と返された。
「義理チョコ」が何で結婚につながるんですか?と、たずねると・・・
先輩の「義理」にも色々事情があったらしい。
なんでも・・・遊び仲間の男達に借りがあって、その借りをバレンタインに手作りチョコで返せとリクエストされたそうだ。
そもそも、先輩は料理が苦手なのだが、料理上手の男達になじられて、
苦し紛れに「私、スィーツだけは自信がある。」と見栄をはった。
それならバレンタインの「義理チョコ」を手作りでよこせと仲良しの男達からせがまれた。
その中に結婚のお相手がいて、そのレシピを彼にそっと教わったそうだ。
一生懸命、一心不乱に作ったが、・・・なにせ初の試み。
悪戦苦闘の末、出来上がったチョコは、どうみても「泥団子」・・・。
バレンタインの翌日、彼女のもとに届いたメールには、彼らからの苦情ばかり。
「あの泥団子は、嫌がらせか!」とか、「チョコレートには、こんな不味いものがあるのですね」
とか、「来月、復讐してやる」てな、脅迫文まであった。
それでも、彼だけは「チョコ本来の味があって美味しかった」と言ってくれたらしい。
そして、先輩はホワイトデーに、彼からの「お返し」に「落とされた」そうだ。
聞けば・・・・彼は本当に料理上手らしく、彼が手作りしたボール一杯分のプリンに面食らった。まず最初にそのプリンが、べらぼうに美味かったそうだ。
そして、そのプリンの中から、まさか指輪が出てくるとは思いもしなかったらしい。
尊敬するクールな先輩は、プリンと指輪で、あっけなく落ちた。と笑顔で言った。
ハイ、ご馳走様でした!
《バレンタインの泥団子》 その2
幸せな先輩はともかく、今年のバレンタインは、本当に悩んだ。
もう2年も付き合っている彼はいるけれど、あの事件から「冷戦中」・・・。
あの事件というのは・・・・、年末年始、彼の仕事も忙しく慌しいさなかで、
私も気を使って、電話やメールも控え、出来るだけワガママを言わないようにしていた。
だけど「忙しい、忙しい」と言いながら、先月、知らない女の子とツーショットで飲んでた、
と友達が教えてくれた。
「どういうことなのよ?」ぶちきれて責めたら、
「お前が連絡もくれないからだ!」と逆切れされた・・・。
それから電話もくれない・・・。メールもない・・・。
バレンタインが、仲直りのきっかけにもなるかも・・・とは思うが、どうも釈然としない。
私は悪くない。でも・・・・腐っても彼は、「私の彼」。
そこで私はひらめいた!
先輩の「泥団子」をヒントに、わざと苦くて不味いチョコでリベンジしてやろうと決めた。
チョコにショウガやら唐辛子やらをぶち込んでみた。
味見してみたが・・・かなりの力作だ。
これはもう、ほとんど嫌がらせだと、思わずほくそえんだ。
バレンタインだから・・・と言い訳しながら、久々に彼に会った。
渾身の「泥団子」をそっと渡したら・・・・、嬉しそうに受け取って早速一口食べた。
「やった!ざまあみろ!!」と心で呟いたが・・・驚いたことに「美味しい」と一言。
こんなに「凄い泥団子チョコ」なのに、あっという間に全部食べてくれた。・・・・
腐っても彼は、やっぱり「私の彼」だ。思わず惚れ直した。
その時、料理が苦手な先輩の幸せそうな笑顔が、頭をよぎった。
次は、私の番かな・・・・・。
《チーズ好きの税理士のバレンタイン》 その1
チーズ好きな税理士の彼が、生涯でバレンタインにチョコレートを貰ったのは、10回。
最初にチョコを貰ったのは、高校受験を控えた中学3年の時だった。
自転車置き場に止めてあった自転車のかごに板チョコが一枚だけ入っていた。
板チョコの下にメモ用紙が一枚。「受験勉強頑張って下さい」と一行だけで、
名前も何も書いてなかった。それでも、初めて貰ったチョコレートに、心がときめいた。
「誰だろう? どんな女の子だろう?」 様々に妄想は膨らんだが、ついに犯人は分からなかった。彼は、この初めてのバレンタイン体験を、
後に「バレンタイン、板チョコ投げ入れ事件」と名づけた。
2回目と3回目は、高校時代。部員が少なく、むりやり引っ張り込まれた演劇部だったが、
演劇の魅力にとりつかれ、思いがけず夢中になった。
その演劇部の後輩から生まれて初めて告白された。
自分には不釣合いなほどに、成績優秀で、美形の後輩だった。
高校3年のバレンタインデーに初めて女の子とキスをした。
彼の人生で一番輝いていた頃だ。
がしかし、運命とは非常なもので、その年の大学受験にことごとく失敗し、
一浪の末、彼が合格したのは三流私立大学・・・。
方や一年後輩の彼女は、現役で一流国立大学・・・。
その後は当然のように、格差社会の現実の中で、二人は疎遠になった。
《チーズ好きの税理士のバレンタイン》 その2
チーズ好きの税理士の彼が、青春時代に貰ったチョコは、通算3個。
高校時代に付き合っていた頭の良い一つ年下の彼女は、現役で一流国立大学に入学し、
自分は、一浪の末やっと受かった三流私立大学・・・・。
大学の格が違うだけで当たり前のように、彼女との距離は遠くなった。
その後の大学生活は地味だった。
地方出身の貧乏学生には、都会のバレンタインデーなど無縁だった。
4年間、一度もバレンタインにチョコなど貰ったこともない。
そもそも虫歯が酷くて、チョコなど食べることもなかった。
卒業後、今の会計事務所に入ってからは、6年連続で同僚からありがたい「義理チョコ」を頂いてきた。しかし、その「義理チョコ」も一昨年、所長の都合で廃止された。
バレンタインのチョコには、もう縁がない、と思ってたが・・・・、
なんと今日、思いもかけず宅配便でチョコが届いた。
生涯10個目のバレンタイン・チョコだ!
贈り主は、去年の暮れに業界のパーティで知り合ったベンチャー企業の女社長!
確か・・・独身だと言っていた。久々に胸がときめいた。
パッケージを開くと、ハート型のチョコレートに、メッセージが添えられている。
その女性らしい手書きの文字にもときめいた。が・・・・そこには・・・・
「今月の確定申告、よろしくお願いします。」と、力強い一行があった。
「できる女」は、義理に厚い・・・・。
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