2008/5/1:略奪する女

《略奪する女》
それは、彼女の一目惚れから始まった・・・・・
その頃の彼女は、20歳で、お洒落な飲食店で夜のバイトをしていた。
彼は3つ年上で地元優良企業のサラリーマン。
若いのに真面目で、気配りのできる好青年で、先輩からも可愛がられていた。
イケメンで身長も高く、彼女は一発で彼のとりこになった。
しかし、彼はすでにその時、会社の上司のお嬢さんと交際して1年になっていた。
彼との出会いは、彼女のバイト先の飲食店だった。
彼が会社の飲み会で、お客さんとして店にやってきた。
その瞬間、彼女は「人生最初の一目惚れ」に落ちた・・・・。
普通は、そこでドギマギしながらも、じっくりと情報収集に入るのだろうが・・・・
彼女は違った。
出逢ったその瞬間、一目惚れして、すぐその場で自分から
「私、貴方を待ってたの!私と付き合って!!」
と周りの空気も読まず、堂々と交際を申し込んだ。
しかし、さすがに会社の同僚の手前、彼は「彼女がいるから・・・」とはぐらかした。
でも、彼としては、そんな風に女性からいきなり交際を申し込まれたのも初めてで、
正直まんざらでもなかった。
ただ・・・実際に結婚を前提に交際している女性がいることも確かだった。
しかも、会社の上司のお嬢さん・・・・。
実際には、ありえない事・・・・、その時彼は、そう思ってた。
バイト先の飲食店で、彼に一目惚れして、いきなり交際を申し込んでから一週間後。
彼女が店のカウンターでしょぼくれていると、思いがけず彼が一人でお店ににやって来た。
なんでも接待の帰りで、飲み足りないので寄ったという。
「も、もしかしてOKってこと?」 突然の彼の出現に胸が高鳴った。
「ねぇ、このあいだのお願いマジなんだけど・・・考えてくれた?」
恐る恐る彼に尋ねてみた。
がしかし・・・、答えは・・・・「NO!付き合えない!」 そうきっぱりと言われた。
「だって俺、今真面目に付き合っている人、いるから・・・。」
しかも、上司のお嬢さんだし・・・・・・。
普通、女からコクって、そんな風に断られたら、悲しくても素直に諦めるんでしょうが・・・
彼女が凄いのは、ここから!
「彼女がダメなら2番目でもいい!!」とまで懇願した。
そこまで言われるとは夢にも思わなかった彼、心の中の“天使と悪魔が”戦っていた!
そして彼女は、追い討ちを掛けるように、
「2番目もダメなら、貴方のファンでいていいですか?」
うるうるした瞳でそう言ってのけた。
ほとんど何でもありの条件に、彼はとうとう彼女の手に落ちた・・・・・!!
「貴方のファンでいい・・・」と言いながらも・・・・・・
彼女は、心の中で「しめた!」と叫んだ。「ここまでくればこっちのもの!」
「絶対、彼を今の彼女から奪ってみせる。」と自信満々だった。
なぜなら、彼女には《女優》というあだ名が付けられるほど、
男の前では「超演技派の女」だった・・・・。
略奪愛を目論んで、まんまと「2番目」に収まった超演技派の彼女だったが、
彼を完全に奪うためには、様々な仕掛けや舞台設定が必要だった。
そこで、まず手始めに彼女は、お洒落な飲食店のバイトを辞め、普通のOLに転身した。
夜のバイトでは、彼の生活サイクルに合わない。
まずは、彼の生活に合った昼の仕事に転職し、ファッションもそれ風に大きく変えた。
週末は、今の彼女にとられてしまうので、仕方ないが・・・・
週末以外の夜は、ほとんど毎日彼と一緒!
本当の自分とは180度違う、正反対の「お嬢様」を演じていた。
彼も彼女との時間を大切にしてくれし、かなり親密にもなっていた。
そんな状況で半年ぐらい付き合いが続くと、彼女はついに本気モードに突入!
「今は2番目でも、そろそろ・・・・」彼女は、この略奪愛に徐々に自身を深めていった。
いよいよ最後の締めだ・・・・、と気合を入れて略奪モードに入りかかっていた頃だった。
突然 彼の結婚が決った。
お相手は、もちろん彼の上司のお嬢さん・・・・。
「いままでありがとう。」そう言って、彼は彼女と会わなくなった。
それからが彼女の大変なところ!!今まで演じていた「お嬢様」役は、どこへやら。
泣くは、わめくは、それはもう大騒ぎ!
毎日お酒を飲んでは彼に電話をかけまくり、夜中にお相手の家の前に立っては、
窓に石を投げ、ガラスを割ったり、・・・・・・・!
ストーカーまがいの付きまといで、パトカー呼ばれたり・・・。
そりゃもう大迷惑女!!
愛が憎しみに変わったとたん、彼女は本来の「悪魔」になった。
略奪愛を目論んでは見たものの見事に失敗した超演技派の彼女。
彼に合わせて無理して勤めたOLは、続ける理由がなくなったのでさっさと辞め、
お気楽な飲食店のバイトに舞い戻った。
悪魔のような彼女だったが、それでもそんな彼女に、思いを寄せる男がいた。
仮にその男を「ミツグ君」と呼ぼう。
よせばいいのに、そのミツグ君、ちょっとMっ気があるようで、
彼女を口説いては、いつも振られるんだが、なかなか諦めない。
週に2~3回はお店に通って来る。
なんでもお金持ちの家柄だとかで、羽振りはいいし、飲みっぷりもいい。
良いお客サンなので、彼女も時々食事ぐらいは付き合っていたが、タイプではなかった。
ブランドのバッグや洋服をプレゼントされても、すぐに後輩の子に安く売り飛ばしていた。
これが良いお小遣いにもなった。
ある日、ミツグ君は、恋に破れてぼろぼろの彼女を慰めようと食事に誘い、
お酒の勢いもあって、なし崩し的にホテルへ・・・・・
ここまでは、普通によくあることで、「お互い様・・・・」なのだが・・・・、
やっぱり彼女は悪魔だった。
朝、目覚めると彼女のとなりにミツグ君がいる。
え?これって・・・・!うそでしょ?全く記憶がない。
彼女は一瞬にして“キレた”
「なんで私があんたなんかと?冗談じゃない」
寝起きざまに、突然罵られ、ミツグ君はただただ困惑した。
「だって・・・・昨日は、僕のこと好きだって・・・・言ってくれたじゃないか・・・」
記憶がないからどうしようもないけど・・・・、だけど、この人はイヤ!!
この人だけは嫌なの!!
「貴方の親に言いつけてやる」そう叫んだ瞬間、悪知恵がひらめいた。
彼女の頭に ポッと電球が燈るように「慰謝料」という3文字が浮んだ。
あの彼には、そんなこと要求できないけど、この男なら・・・・
「慰謝料」。なんて素敵な言葉なのだろう・・・・と彼女は思ったそうだ。
彼女は、ミツグ君に無理やり犯された哀れな娘を演じきり、
実際にミツグ君の親からまんまと200万を支払ってもらった。
なんだか、略奪に失敗した彼に対する「腹いせ」とも思えるのだが・・・。
このお話は、20年ほど前にあったホントの出来事。
世の中には、こんな悪魔のような女もいる事を覚えておいて欲しい。
くれぐれもミツグ君の二の舞だけは踏まないように!
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