2008/7/31:ひと夏の出来事あれこれ

《ひと夏の出来事 あれこれ》
昭和の昔から、夏は「恋の季節」と歌われているように夏に始まる恋から、様々な物語が生まれていますね。
今日は、そんな「ひと夏の出来事」をご紹介してまいりましょう。
あなたの「思い出の夏」に、似たような出来事、あるかもしれませんね。
【夏のシャープペンシル】
彼が高校3年生の夏休みは、大学受験のためだけにあった。
夏休み初日から、高校の補習授業があり、その後は仙台の大手予備校の夏期講習に泊り込みで参加した。
夏休みだというのに、朝から夜中まで受験勉強に追われていた。
それでも、夏期講習のクラスでは、席を並べる数人と友達になれた。
一日の講座が終えた帰り道、その仲間達と喫茶店で一息つく時間が楽しみだった。
その仲間の中に、仙台の女子高に通う彼女がいた。
夏期講習が始まって一週間。いつもの帰り道で彼と彼女は初めて二人になった。
喫茶店の片隅で、お互いの学校の話や志望校の話など、たわいのない話しをした。
初めて二人きりで話しているのに、まるで幼馴染のように不思議と馬が合った。
お互いの志望大学も東京の大学だった事もあり、自然と打ち解けた。
とはいえ、彼も彼女も受験生。恋の話など出来るはずも無かった。
それでも何故か自然に、夏期講習の帰り道、その喫茶店で二人は時間を過ごした。
それが当たり前のようになった頃、夏期講習も最終日を迎えた。
最終日の講座を終えた後の電車で彼が地元へ帰る、と知って、彼女は駅まで見送りに来てくれた。
駅のホームで二人は別れを惜しむように、たわいのない話で時間をつないだ。
電車がホームに入り、いよいよ別れのときが来た。
電車に乗り込もうとする彼に、「ちょっと待って!」と言い、彼女は胸のポケットから愛用のシャープペンを取り出し、彼に渡した。
そして彼は、彼女に手を差し出し、初めて彼女と握手した。
電車のドアが閉まるまで、二人は固く手を握り合った。
走り出す電車の窓の向こうで、彼女は泣き笑いしながら手を振ってくれた。
彼も彼女も高校3年、18歳の夏の事だった。
【ラジオと海と寒い夏】
彼女が大学4年の夏、世はまさに女子大生ブームで、地元テレビ局やラジオ局では、番組アシスタントやラジオ・パーソナリティにこぞって女子大生を起用する風潮にあった。
ご多分に漏れず彼女も、先輩の紹介などもあってその年の春から地元ラジオ局で深夜番組のパーソナリティを任されていた。
任されたといっても、彼女一人ではとても無理なので、同世代の女子大生3人で毎週金曜日の深夜に生放送を担当していた。
女子大生3人が、毎週たわいのない話や恋愛話で盛り上がる・・・
といういい加減な番組だったが、番組ディレクターが毎週いろんなネタを用意してくれたのでそれなりに面白い番組に仕上がっていた。
その生番組が終わる午前1時過ぎに、毎週「反省会」という飲み会があり、それが楽しみの一つでもあった。
それに、7歳も年上の番組のディレクターと飲んで話せるのもこの時だけだった。
彼女は、番組が始まった春からディレクターの彼が気になっていた。
その年の夏は、大変な冷夏に見舞われた「寒い夏」だった。
いつものように深夜番組が終わり、みんなで反省会・・・と思っていたら、彼女の他の二人は、彼氏が迎えに来てるという。
それじゃ反省会にならない、ということで、その場は解散したけど、夜中に女の子一人で帰すわけにはいかない、と彼が車で彼女を送る事になった。
助手席に乗った彼女は、思い切って「真っ直ぐ帰りたくない・・・」と言ってみた。
「それじゃ、海にでもいこうか・・・」と二人は真夜中の海に向かった。
夏とはいえ、深夜の海、しかも寒い夏・・・半袖1枚ではたちまち寒さに震えた。
震える彼女を彼は優しく抱きしめた。
それはとっても自然な振る舞いだった。
「だって・・・本当に寒かったんだもの・・・」と彼女は振り返る。
そして二人はその後、本格的に恋に落ちた。
あの夏、寒い夏だったからこそ、二人は結ばれたのかもしれない・・・・。
しかし、止せばいいのに二人は、この話をラジオ番組のネタで使い、周囲に関係がばれた・・・・らしい。
【運命の出会い旅】
その年の夏、彼女は女友達と二人、車で旅に出る事にした。
ようやく取れた夏休みに、女二人で3泊4日・・・。
どうせなら北海道に渡ろうと、だいぶ以前から綿密な計画を立てていた・・・
が、夏休み直前に北海道を地震が襲い、津波で被害も出たという。
そこで、東北一周の旅に切り替えて計画を練り直した。
どうせなら一泊はキャンプもしようと、テントや寝袋も用意した。
夏の海と温泉とキャンプ・・・・、計画は完璧だった。
旅の初日は早かった。朝8時には出発し、昼には海に着き夏の海を満喫した。
その日の夜は、キャンプと決めていたので、日が暮れる前にキャンプ場に到着。
現地でバーベキューコンロを借りて、焼肉なら簡単・・・と軽く考えていたが、なかなか炭に火がつかない・・・。もたもたしているうちに日も暮れかかってきた。
テントも女二人では上手く立てられない。「どうしよう・・・・」
あせる二人を見るに見かねて、隣のテントの男性陣が火お越しからテントまで手伝ってくれた。
彼らは、要領よく火をおこしてくれて、ついでにビールまでおすそ分け。
いつの間にか一緒にバーベキューで盛り上がってしまった。
翌日、男性二人とはキャンプ場で別れ、彼女達は2日目の目的地である温泉を目指した。
その後、2日目、3日目までは予定通り快適な旅だったが・・・・
最終日、川沿いの峠道で予想外の出来事が起きた。
車がパンクした・・・・。近くに民家もない。電話も通じない。
仕方なく、女二人でスペアタイヤを取り出し、ジャッキを探し、タイヤ交換を試みたが、どうにも上手くいかない・・・・。「どうしよう・・・・」
そこに、なんと見覚えのあるワゴンが通りかかった。あのキャンプ場の二人だ。
二人は、あの時と同じように手際よくあっという間にタイヤを交換してくれて、パンク修理のため、その先のガソリンスタンドまで一緒に行ってくれた。
彼女達は、彼ら二人に心から感謝したが、それ以上にこの出逢いに運命的なものを感じた。
だから、その後4人は週末に会うようになり、やがて一組は結婚し、もう一組は、現在進行中。
夏の旅には、そんな運命的な出会いもあるんだね。
【海の家奇談】
その夏、彼は海水浴場で海の家のアルバイトをしていた。
大学2年生の夏休み。親戚が毎年開いている海の家だったが、年々人手不足になりついに彼にも声が掛る事になった。
海の家に遊びに来ていた子供の頃は、本当に楽しい場所だったが、いざバイトで働いてみると、結構きつい。
暑い盛りの厨房も辛い、パラソル立ても重労働、シャワー室の掃除は情けない・・・。
まぁ、それでも水着の女性を遠慮なく眺められる事だけは、救いになった。
それに、忙しい分だけ売上も上がり、大入りの日にはバイト代の他にお小遣いももらえた。
一日の営業が終わり、店を閉めると彼はその海の家に泊っていた。
暮れてゆく海を眺めながら飲むビールは格別なものだった。
そして、蚊取り線香の煙にむせながら一人店の中で潮騒を聞いていた。
そんなある夏の夜、いつものように一人で海の家の留守番をしているところに、「ごめんください。誰かいませんか。」と外から声がした。
誰だろう・・・と入り口を開けると、一人の女性が立っていた。
「こんな夜に一人で、どうしたの?」と聞くと・・・
彼氏とケンカして、置き去りにされた・・・という。
それってドラマとか小説によくある話だけど、
そんな酷いことする奴が、本当にいるんだ・・・・と驚いた。
明日の朝には電車で帰るから、今晩だけ泊めて欲しい・・というので、仕方なく泊める事にした。
手持ち無沙汰だったので、ビールを進め、とりあえず二人で飲んだ。
話をするうちに同い年だと分かり、不思議と打ち解けるようになって、夜中まで話し込んだ。
夏の夜の成り行き・・・・というのは恐ろしいもので、その夜、彼は初めて女性を知った。
さらば、童貞・・・の夏になった・・・・。
がしかし、次の日の朝、彼女の姿はなく、彼女がいた気配さえもない。
夕べの彼女は、なんだったんだろう・・・・。夢だったのか???
混乱する頭で彼女の痕跡を探しまわったが、何も見つからなかった。
ただ飲みかけのグラスだけが二つ、テーブルの上に残されていた。
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